
PCパーツが高い。本当に高くなってしまいました。正直ここまで「買い時を逃すと後悔する」と感じたタイミングは片手で数えるほどしかありません。
メモリやSSD、グラフィックボード、この3つのパーツが揃って値上がり傾向にあるなんて、よほどのことがない限り起こりません。
多くの人は「また安くなるでしょ」と高をくくっています。私もそう思いたい。けれど市場を調べれば調べるほど、この楽観論が危険だと気づかされるんです。
半導体不足やAI需要の急増、地政学リスク、これらが複雑に絡み合った今、ブラックフライデーのセール価格が「最後の良心的な価格」になる可能性が高いんですよね。

2025年のブラックフライデーは、まさにその数少ない機会の一つです。
今回は、なぜこの3つのパーツが値上がりしているのか、その裏側にある事情を徹底的に掘り下げます。
メモリ価格が2025年10月から急騰した本当の理由
わずか1ヶ月で2倍以上!異常な価格高騰の実態

メモリの値上がり、もはや「緩やかな上昇」なんてレベルじゃありません。
2025年10月下旬から、DDR5メモリの価格が爆発的に上昇しています。例えば、10月1日時点で約14,700円だったDDR5-5600 16GB×2枚セットが、11月2日には約32,700円前後まで値上がりしているんです。2倍以上ですよ。
私の知り合いのパーツショップ店長は「問屋の仕切り価格が8月末の最安値から3~4倍の水準になっている」と言っていました。しかも、その価格でも注文を受けてくれないほどの品薄状況だそうです。
価格.comのデータを見ると、平均価格が15,000円前後で推移していたのが、10月下旬になって35,000円まで高騰しているのが分かります。グラフを見た瞬間、マジかって思いました。
DDR5メモリの価格推移(2025年)
| 時期 | DDR5-5600 16GB×2枚 | 前月比 |
|---|---|---|
| 2025年8月 | 約15,000円 | – |
| 2025年9月 | 約14,700円 | -2% |
| 2025年10月前半 | 約15,000円 | +2% |
| 2025年10月後半 | 約28,000円 | +87% |
| 2025年11月 | 約35,000円 | +25% |
この表を見ると、10月後半から異常な動きが始まっているのがわかります。なぜこんなタイミングで急騰したのか、気になりますよね。
DRAMメーカーの受注停止という衝撃
原因は明確です。AI需要です。


Micron、SK hynix、SAMSUNGの3大チップメーカーがすでに年内の受注を停止しているという情報が入ってきました。これ、業界では相当な衝撃なんです。
さらに、ADATA、Crucial、CORSAIR、G.SKILL、Team、SanMaxといったメモリメーカーも、代理店からの新規注文をすべて断っている状況だそうです。つまり、メーカーが「もう作れません、売るものがありません」と言っているわけですよね。
ChatGPTを始めとする生成AIを動かすデータセンターには、膨大な量の高性能メモリが必要です。特にHBM(High Bandwidth Memory:高帯域幅メモリ)と呼ばれる高速メモリの需要が爆増し、製造ラインがそちらに優先的に振り向けられているんです。
私が取材したあるPCショップのバイヤーは「これは2021年のマイニングブームとは違う。あの時はいつか終わると分かっていた。でも今回のAI需要は構造的で、少なくとも数年は続くと予測されている」と深刻な表情で語っていました。
なるほど、と思いましたね。
秋葉原では購入制限が始まっている
事態の深刻さを物語るのが、パソコンSHOPアークが11月1日からメモリやSSD、HDDの購入制限を開始したことです。
購入制限がないショップでは、10~20枚単位のまとめ買いが続出。中古ショップでは、50枚近く入った箱ごと購入を希望するケースまで出ているそうです。転売目的もあるでしょうが、企業の買い占めも起きているんでしょうね。
「この状況、いつまで続くんだろう」そう不安に思うのは当然です。
市場予測では2026年まで値上がり傾向が続くとされています。つまり、少なくとも来年いっぱいは今より安くなる可能性は低いということです。
SSDも例外じゃない!NANDフラッシュ市場の構造変化
「SSDは安くなり続ける」という常識が崩壊した


SSDって、どんどん安くなるものだと思っていませんか?
その常識、2025年で終わりました。2025年11月に入ると、SSDの価格が急上昇に転じたんです。特に4TBクラスのハイエンドモデルで顕著ですね。
TrendForceの市場分析によれば、2025年第2四半期からNAND価格が回復に転じ、第4四半期には5~10%の上昇が予測されているそうです。メモリほど急激ではありませんが、確実に値上がり傾向です。
私自身、2025年の夏に2TBのNVMe SSDを買おうとして、「まだ高いな、もう少し待とう」と思っていたら、秋になってさらに値上がりしていました。これ、リアルな失敗談です。
Phison CEOの衝撃的な予測
さらに衝撃的なのが、SSDコントローラー大手PhisonのCEOの発言です。「NANDの供給不足が10年続く可能性がある」と予測しているんです。
10年ですよ。これが本当なら、SSDは今後長期にわたって高値で推移することになります。もちろん、これは最悪のシナリオですが、業界のトップがそう言うということは、相当深刻な状況だということです。
実際、Samsung 990 PROやSanDisk WD_BLACK SN850Xといった4TBクラスのハイエンドSSDは、2025年11月から平均価格が急上昇に転じたという報告もあります。
主要SSDの価格動向(2025年11月時点)
| モデル | 容量 | 2025年夏頃 | 2025年11月 | 変動 |
|---|---|---|---|---|
| Crucial T500 | 2TB | 約17,000円 | 約21,700円 | +28% |
| Samsung 990 PRO | 4TB | 約55,000円 | 約61,490円 | +12% |
| WD_BLACK SN850X | 4TB | 約52,000円 | 約58,000円 | +12% |
注目してほしいのは、この値上がりがまだ「始まったばかり」だということ。2026年にかけてさらに上がる可能性が高いんですよね。
グラフィックボードの値上がりは「AI需要」と「新世代移行」の複合要因


RTX 50シリーズ登場後も品薄が続く理由
グラボの状況も深刻です。2025年1月にRTX 50シリーズが発売されましたが、発売から10ヶ月以上経った今でもかなりの品薄状態が続いています。
通常なら新世代が出て時間が経てば、供給も安定して価格も落ち着くはず。でも今回は違います。
NVIDIAの2025年第4四半期の売上のうち、Data Centerが90%以上を占め、Gamingは6.5%に留まっているという状況なんです。
つまり、NVIDIAはAI向けGPUの生産を最優先していて、ゲーム用GPUは「おまけ」レベルの扱いになっているわけです。これじゃあ、供給が追いつかないのも当然ですよね。
私が取材したあるPCショップのバイヤーは「RTX 5080やRTX 5090は入荷してもすぐ売り切れる。予約すら取れない状況が続いている」と言っていました。
AMDも値上げを発表、逃げ道がない
「じゃあAMDのRadeonにすればいいじゃん」と思うかもしれません。でも、AMDもGPUとVRAMの卸価格を値上げする予定だそうです。
Radeon RX 9070シリーズは2025年3月に発売されましたが、こちらも品薄気味。2025年11月になって、ショップによっては先月よりも5,000円~10,000円程度の値上げが行われているという報告もあります。
つまり、NVIDIAもAMDも値上がり傾向にあるということ。選択肢がないんですよね。これ、かなりキツイ状況です。
旧世代グラボも在庫減少で値下がりしない
「新世代が出たら、旧世代のRTX 40シリーズが安くなるでしょ?」
この考え、半分正解で半分不正解でした。確かに一部モデルは値下がりしましたが、RTX 3060は2世代前にもかかわらず、画像生成AIの使用で注目されて4万円ほどで推移している状況です。
さらに、旧世代の在庫自体が減ってきているため、値下がり幅が小さいんです。メーカーも小売も、無理に値下げしなくても売れてしまうから、価格を維持しているわけですね。
グラボ価格の実情(2025年11月時点)
| モデル | 発売時期 | 現在の価格帯 | 状況 |
|---|---|---|---|
| RTX 5090 | 2025年1月 | 約30~35万円 | 品薄継続 |
| RTX 5080 | 2025年1月 | 約18~22万円 | 品薄継続 |
| RTX 5070 | 2025年1月 | 約9~11万円 | やや入手しやすい |
| RX 9070 XT | 2025年3月 | 約10~12万円 | やや品薄 |
| RTX 4060 | 2023年 | 約4~5万円 | 在庫あり |
つまり、ブラックフライデーでRTX 5070やRX 9070が少しでも安く買えるなら、それは十分に「買い」なんです。
ブラックフライデーで賢く買うための実践戦略
「今年のセールが最安値」と考えるべき3つの根拠
ここまで読んでくれたあなたなら、状況の深刻さは理解してもらえたと思います。
でも「本当に今買うべきなのか?」という疑問は残りますよね。私なりの答えは「イエス」です。その理由を3つ挙げます。
1. 2026年も値上がり傾向が続く予測
2025年後半、特に第4四半期では、DRAM価格が8~13%上昇すると予測されているだけでなく、この傾向は2026年まで続くとされています。
つまり、少なくとも来年いっぱいは今より高くなる可能性が高いんです。
2. 2025年のブラックフライデーは「値上げ前最後のセール」
11月のブラックフライデーは、2026年の本格的な値上がりが始まる前の最後のセールです。年末商戦に向けて、各社は在庫を動かしたいはず。
値上げ前の在庫を持っている店舗もあるでしょう。その在庫を放出するラストチャンスがブラックフライデーなんですよね。
3. 購入制限が広がる前に確保すべき
すでに一部ショップでは購入制限が始まっています。これが全国的に広がる前に、必要な分は確保しておくべきです。
制限がかかってからでは、欲しい容量や枚数が買えない可能性もありますから。
具体的な購入優先順位と予算配分
じゃあ、具体的にどう買えばいいのか。
予算が限られているなら、以下の優先順位をおすすめします。
【予算5万円以下】
- メモリ: DDR5 32GB(16GB×2)
- SSD: 1TB NVMe Gen4モデル
メモリは確実に値上がりしているので最優先です。DDR5-5600あたりが狙い目。今なら3万円台前半で買えるモデルもあります。SSDは1TBクラスなら2万円前後で手に入ります。
【予算10万円前後】
- メモリ: DDR5 32GB(16GB×2)
- SSD: 2TB NVMe Gen4
- グラボ: RTX 5060 TiまたはRX 9070(予算次第)
この価格帯なら、メモリとSSDを確保した上で、グラボのアップグレードも検討できます。ミドルレンジのグラボは競争が激しく、セールでの値引き幅も大きくなりやすいんですよね。
【予算20万円以上】
- グラボ: RTX 5070またはRTX 5080
- メモリ: DDR5 64GB(32GB×2)
- SSD: 2TB×2(システム用とゲーム用)
予算に余裕があるなら、ハイエンドを攻めましょう。特にRTX 5070は、性能対価格で見ると今が買い時かもしれません。品薄が続いているので、見つけたら即決すべきです。
失敗しない店舗やECサイトの選び方
「どこで買うか」も重要です。
私の経験上、ブラックフライデーで本当にお得なのは以下の3つのパターン
パターン1: 大手家電量販店のポイント還元
- ヨドバシカメラやビックカメラなど
- ポイント込みで実質20-30%オフになることも
- 保証も手厚い
- ただし、品揃えはPCショップに劣る
パターン2: PCショップの独自セール
- ドスパラやパソコン工房、ツクモなど
- 在庫処分品が狙い目
- 型落ちでも性能は十分なものが多い
- 専門店なので品揃えが豊富
パターン3: Amazonのタイムセール
- 在庫の入れ替わりが早い
- レビューを参考にできる
- ただし、価格の変動をチェックする必要あり
- タイムセールを逃すと高値掴みのリスクも
注意点として、「普段から価格をチェックしておく」こと。これ、本当に大事です。セールだからって飛びつくと、実はそれほど安くなかったということもあるんですよね。
私は価格.comで価格推移をチェックしてから買うようにしています。
「待つ」という選択肢のリスク
最後に、「もう少し待てば安くなるかも」と考えている人へ。
その判断、いつものブラックフライデーであれば賛成ですが、今年2025年に関しては危険です。
なぜなら
- メモリは10月から急騰し、2026年も上昇予測
- SSDも値上がり傾向で、10年不足という予測も
- グラボはAI需要で構造的に品薄が続く
つまり、待てば待つほど高くなる可能性が高いんです。
2021年のマイニングブームの時のように「ブームが終われば元に戻る」という状況ではありません。AI需要は構造的で長期的なものだからです。
もちろん、「絶対に今買え」とは言いません。予算や必要性は人それぞれですから。でも、データを見る限り、2025年のブラックフライデーは「買わないリスク」の方が大きいと思います。
まとめ:メモリ・SSD・グラボが値上がり!ブラックフライデーを賢く利用しよう
ここまで読んでくれて、ありがとうございます。
正直、こういう「今買え」という記事を書くのは気が引けるんです。煽っているように見えるかもしれない。
でも、データを見れば見るほど、業界の人に話を聞けば聞くほど、この状況が深刻だと実感するんですよね。
メモリやSSD、グラボ、この3つが同時に値上がりするなんて、本当に珍しいタイミングです。しかも、その原因がAI需要という構造的なものだから、短期間で解消される可能性は低い。
2025年のブラックフライデーは、おそらく年内最後の、そして2026年に向けても最も安く買えるチャンスになるでしょう。
秋葉原では購入制限が始まり、メーカーは受注を停止し、市場予測では来年も値上がりが続くとされています。この状況で「もう少し待とう」というのは、かなりリスキーな判断だと思います。
もちろん、予算や必要性は人それぞれです。「絶対に今買え」とは言いません。でも、もしあなたがPCのアップグレードを考えているなら、2026年の春や夏まで待つより、今動いた方が後悔は少ないと思います。
私自身、この記事を書きながら「ああ、あのとき買っておけばよかった」と思った経験を何度も思い出しました。値上がりしてから後悔するより、セールで少しでも安く手に入れる方が、精神衛生上もいいですよね。
最後に一つだけ。PCパーツは「投資」ではなく「消耗品」です。使ってこそ価値がある。多少高くても、今必要なら買う。その判断も、時には正解なんです。
あなたのブラックフライデーが、良い買い物になることを願っています。
【参考情報源】







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